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コラム |
2025.11.01
マンションの構造の主流である鉄筋コンクリート造(RC造)は、木造や鉄骨造と比べ、優れた耐久性と耐震性を誇ります。
しかし、その頑丈な建物も水分、空気、熱、そして経年劣化からは逃れることはできません。
築年数を経過する中で、コンクリートの表面にはひび割れ(クラック)や欠損といった劣化の症状が発生します。
鉄筋コンクリートの劣化を放置すると、建物の内部に水分が浸入します。
鉄筋が腐食し錆びることで膨張します。
この膨張によってコンクリートが剥離・剥落します。
構造の強度を低下させます。
居住者や通行人に危険を及ぼす可能性が高まります。
マンションのオーナー様、管理組合の役員様、そして不動産投資家の皆様にとって、鉄筋コンクリート補修は、資産の維持と居住者の安全を守るために避けて通れない重要なメンテナンスです。
今回の記事では、
マンションRC補修の基本知識
費用
適切な工法
失敗しない業者選定のポイント
までを徹底解説します。
特に、私たちが拠点とする大阪エリアでの補修事例や独自技術についても紹介します。
鉄筋コンクリートの補修を行う前に、劣化の原因と症状を正確に把握することが必要です。
表面に現れた症状は、内部の深刻な問題のサインである可能性があります。
鉄筋コンクリート造(RC造)の法定耐用年数は47年です。
しかし、実際の寿命は適切な維持管理を行うことで60年から100年を超えることが可能だと考えられています。
劣化を促進させる主な原因は以下の2つです。
中性化:コンクリートは本来、強いアルカリ性(pH12~13程度)を持っています。
鉄筋を錆から守る「不動態」という保護皮膜を形成しています。
しかし、空気中の二酸化炭素の浸入により、徐々にアルカリ性が低下して中性化が進みます。
pHが10以下になると、不動態が壊れ、鉄筋が錆びる原因となります。
塩害:海の近くや融雪剤の影響を受ける場所では、コンクリート中に塩分が浸透します。
鉄筋の錆を直接引き起こす現象です。
中性化と同様に深刻な劣化となります。
コンクリートのひび割れ(クラック)は、構造上の問題や乾燥収縮など、さまざまな原因で発生します。
クラックはその幅によって対策が異なります。
| クラックの種類 | 幅の目安 | 主な原因と症状 | 補修工法の例 |
| ヘアクラック | 0.2mm未満 | 表面の乾燥収縮などで生じる微細なひび。構造上の問題は少ないが、美観上の問題や雨水浸入の可能性もある。 | Uカットシーリング、表面塗布材の塗布 |
| 構造クラック | 0.3mm以上 | 建物全体の力や鉄筋の錆膨張による亀裂。水分が内部に浸入して鉄筋を腐食させる危険が高い。 | エポキシ樹脂注入工法、Uカット工法 |
特に0.3mm以上の幅の構造クラックは、早急に専門業者へ相談しておきましょう。
適切な注入補修を行い、鉄筋への水の浸入を防止することが不可欠です。
爆裂とは、鉄筋の腐食・膨張により、コンクリートの被覆部分が押し出されます。
剥離して剥落する現象です。
鉄筋が露出し、周りのコンクリートが欠落して穴が空いた状態を指します。
爆裂の補修は以下の工程で行います。
はつり/斫り(除去):剥離しかけたコンクリート部分や錆びた鉄筋周囲のコンクリートをハンマーや機械で削り取る(ハツリ)。
錆処理(ケレン):露出した鉄筋の錆をブラシやケレン作業で完全に除去し、防錆材を塗布して腐食防止処理を行います。
断面修復:コンクリートが欠損した部分を、ポリマーセメントモルタルなどの補修材で埋め戻し、平らな状態に回復させます。
爆裂は落下の危険を伴うため、発見次第早急に応急処置を行い、専門業者に依頼して本格的な補修を計画する必要があります。
鉄筋コンクリート補修は、劣化度合いや箇所によって
工法
使用する材料
費用
が大きく異なります。
大規模修繕工事の一環として行われる場合が多いです。
クラック補修の工法は、ひび割れの種類と目的に応じて使い分けられます。
エポキシ樹脂注入工法:構造クラック(0.3mm以上)で最も一般的に用いられる方法です。
ひび割れ箇所に注入口を設け、低粘度のエポキシ樹脂を圧力で注入します。
奥深くまで浸透させてひびを埋め戻します。
ひび割れ前の一体性を回復させ、強度を補強する効果があります。
Uカットシーリング工法:クラック部分をU字にカットし、シーリング材や弾性エポキシ樹脂を充填する方法です。
主に水の浸入防止を目的とします。
比較的大きなクラックや動きのあるクラックに適しています。
表面塗布工法:ヘアクラックなど、微細なひびにに対して、セメント系や樹脂系の防水材を塗布して表面を保護する方法です。
美観の回復と水の浸入防止を兼ねます。
マンションRC補修の費用は、
劣化箇所の数や程度
採用する工法
によって大きく変動します。
大規模修繕工事の際に実施される場合が多いです。
| 補修項目 | 単価の目安(材工共) | 補足事項 |
| クラック注入(エポキシ樹脂) | ¥3,000~¥6,000/m | ひび割れの長さで積算。作業スペースの有無で変動。 |
| 爆裂補修(断面修復) | ¥10,000~¥25,000/箇所 | 鉄筋の露出度合いや深さによって単価が異なります。 |
| 浮き補修(タイル・モルタル) | ¥4,000~¥7,000/箇所 | タイルやモルタルの浮きに対するエポキシ樹脂注入工法の場合。 |
費用全体像の把握には、修繕積立金の計画と連動させて考える必要があります。
大阪での大規模修繕の見積もりを複数の業者から取ることが大切です。
微細なひび割れ(ヘアクラック)程度であれば、市販のセメント系補修材やコーキング材を使用したDIYも可能です。
しかし、鉄筋コンクリートの補修を安易にDIYで行うことは推奨できません。
構造的なリスク:0.3mm以上の構造クラックや爆裂は、単に表面を埋めるだけでは内部の腐食の進行を防ぐことはできません。
専門的な知識と工法(エポキシ樹脂注入など)が必要です。
高所作業の危険性:マンションの外壁やバルコニーの補修は高所作業となります。
危険が伴います。
安全性を確保した上で作業を行う必要があります。
軽微な補修以外は、必ず専門業者に依頼してください。
鉄筋コンクリート補修は、通常12年周期で行われるマンション大規模修繕工事の一環として実施されることが多いです。
計画的に行うことで、費用や工期の最適化が可能になります。
大規模修繕工事の主な目的は、建物の長寿命化と資産価値の維持・向上です。
RC補修は、その中で「下地補修工事」と呼ばれます。
外壁塗装や防水工事を行う前の非常に重要な工程となります。
| 大規模修繕の主な工程 | RC補修との関連 |
| 仮設工事(足場設置など) | 高所の補修に必要。弊社の足場なし工法は仮設費用を削減可能。 |
| 下地補修工事 | クラック補修、爆裂補修、浮き補修など、構造に関わる補修の全般。 |
| 外壁塗装・タイル補修 | 補修箇所の保護と美観の回復。外壁塗装は中性化防止に大きな効果。 |
| 屋上・ベランダ防水工事 | 雨水の浸入を防ぎ、RC造の劣化を根本的に防止する役割。 |
下地補修をしっかり行わないと、上からどんなに高品質な塗装や防水を施しても、数年でひび割れや剥がれが再発するリスクが高まります。
マンションの雨漏りは深刻な問題であり、その多くはRC造の劣化に起因します。
原因1:クラックからの浸入:外壁やバルコニーのコンクリートに生じたクラックを通して、雨水が内部へ浸入します。
原因2:シーリング材の劣化:サッシ周りや外壁の目地に使用されているシーリング材が劣化し、隙間が生じた場合に漏水が発生します。
原因3:屋上・ベランダの防水層の劣化:防水層に亀裂や剥がれが発生し、コンクリート躯体へ水が浸透して内部へ漏れます。
雨漏りの補修は、原因箇所のクラックをエポキシ樹脂注入などで処理した後、防水工事や外壁塗装を行います。
根本的に水の浸入を防ぐことが重要です。
マンションのタイル補修工事費用を徹底解説!相場・原因・業者選びの完全ガイド
鉄筋コンクリート補修は建物の構造に関わるため、信頼できる専門業者に依頼することが成功の絶対条件です。
特に、大阪エリアでの業者選定のポイントと、費用削減の技術を解説します。
適切な業者を見つけるために、以下の点を確認してください。
診断の正確性:非破壊検査や打診(ハンマーを使った調査)など、緻密な建物診断を行い、劣化の根本原因を把握できる能力があるか。「コンクリート診断士」などの資格保有者がいるかも参考になります。
工法の提案力:クラックの幅や深さに応じて、エポキシ樹脂注入、ポリマーセメントモルタルなど、最適な工法を複数提案できるか。
大規模修繕の実績:マンション全体の大規模修繕工事の実績が豊富か。特に同規模のRC造での経験が重要です。
保証とアフターフォロー:補修後の保証期間や定期点検の制度がしっかり整っているか。
見積もりの透明性:作業項目や使用材料の単価が明確で、なぜその費用になるのかを丁寧に説明できるか。
私たちは、大阪を拠点にマンションの外壁塗装とそれに伴うRC補修を数多く手掛けている会社です。
特に、次の点で、大阪のマンションオーナー様や管理組合様から高い評価をいただいています。
足場なし工法(ロープアクセス技術)の採用:コンクリート補修の費用の中で大きな割合を占めるのが仮設足場の費用です。
大阪の都心部や狭隘な場所にあるマンションでは足場の設置が困難でコストも高騰しがちです。
弊社は、ロープアクセス技術を用いることで、外壁のクラック補修や爆裂補修を足場なしで行い、仮設費用を大幅に削減しています。
高品質な仕上がり:足場なし工法でも、熟練の職人が丁寧に作業を行いましょう。
爆裂補修後の断面修復やクラック注入を確実に行います。
その後の外壁塗装まで一貫して担当するため、補修箇所の保護まで安心してお任せいただけます。
特に、高さや場所の問題で他社に断られた補修案件や、予算を抑えたい大規模修繕の際は、ぜひ一度私たちにご相談ください。
一度補修を行った箇所であっても、適切な予防策を講じないと劣化は再発します。
マンションの長寿命化を実現するための根本的な対策を解説します。
コンクリートの中性化と鉄筋の錆びを防ぐために、外壁を保護することが最も効果的です。
高品質な外壁塗装:外壁塗装は、見た目を綺麗にするだけでなく、コンクリート表面に強固な皮膜を形成します。
外部からの二酸化炭素や水分の浸入を強力に防ぎます。
特に、遮熱性や防水性に優れた塗料を使用することが、中性化抑制に繋がります。
防水工事の徹底:屋上、ベランダ、開放廊下など、水が溜まりやすい場所は、定期的なアスファルト防水やシート防水、塗膜防水などの改修工事が不可欠です。
水の浸入を未然に防ぐことが、鉄筋の腐食防止に直結します。
鉄筋コンクリートの劣化は徐々に進行します。
小さなサインを見逃さず、早期に対処することが、将来的な大きな補修費用を抑えることに繋がります。
1年に一度の目視点検:理事や管理会社による目視点検で、目立つクラックや剥がれ、雨水の跡などをチェックします。
5年に一度の専門家による調査:大規模修繕の周期に関わらず、専門家(コンクリート診断士など)による打診や中性化深度測定などの詳細調査を行います。
早期に補修を行うほど、使用する材料や工期が少なく済み、費用も安く抑えられる傾向にあります。
大規模修繕や耐震補強工事を含めた鉄筋コンクリート補修に対しては、自治体や国の支援制度が利用できる場合があります。
大阪市の補助制度:大阪市をはじめ、各自治体でマンションの耐震診断や改修に対する補助金制度が設けられています。
事前に確認し、活用することで補修費用の負担を軽減できます。
住宅金融支援機構の融資:大規模修繕に必要な費用を対象とした融資制度も利用可能です。
補修計画を立案する際は、これらの公的な支援制度を含めて、全体の資金計画を練ることをお勧めします。
詳細は地方公共団体の窓口や国土交通省のサイトをご参照ください。
マンションの鉄筋コンクリート補修は、単なる修理ではなく、建物の寿命と資産価値を決める未来への投資です。
クラックや爆裂といった目に見える劣化は、内部の鉄筋腐食という深刻な問題のサインであることを理解し、早期の専門家による診断と適切な工法で対処することが不可欠です。
特に、大阪でマンションの維持管理に携わる皆様へ、私たちは足場なし工法をはじめとする独自技術で、費用と品質の両面から最適な補修ソリューションを提供しています。
お気軽にご相談ください。
A. 爆裂は、鉄筋コンクリート造の劣化症状の一つです。
コンクリート内部の鉄筋が中性化や塩害などによって腐食し錆びることで膨張します。
周囲のコンクリートを押し出して剥がれ落とす現象です。
コンクリートが欠落して鉄筋が露出した状態を指します。
放置すると建物の強度低下や剥落による人への危険に繋がるため、早急な断面修復補修が必要です。
A. コンクリートのひび割れ(クラック)は、幅0.3mm以上を目安に専門業者への依頼を強くお勧めします。
0.3mm未満のヘアクラックは表面の軽微な劣化の可能性もありますが、0.3mm以上は構造クラックと呼ばれます。
雨水が鉄筋まで浸入して腐食を引き起こす危険性が高いため、エポキシ樹脂注入工法などの専門的な補修が必要です。
A. マンションRC補修の費用削減には、主に3つの対策があります。
①定期的な点検による早期発見と早期補修
②大規模修繕工事と同時に行い、仮設費用を他の工事と分担する
③特に大阪などでは、私たちD-manが採用する足場なし工法(ロープアクセス)を活用し、高額な足場設置費用を大幅に削減する、などが挙げられます。
A. 鉄筋コンクリート造(RC造)の法定耐用年数は47年ですが、これは減価償却のための税法上の年数です。
建物の物理的な寿命(耐久年数)は、適切に補修やメンテナンスを行えば60年から100年以上も可能です。
適切な外壁塗装や防水工事で中性化の進行を抑えます。
定期的にRC補修を行うことが、長寿命化の絶対条件となります。
A. コンクリート補修の再発防止には、まず水と二酸化炭素の浸入を防ぐことが最重要です。
具体的には、補修が完了した後に、高い防水性と遮熱性を持った外壁塗料で建物全体を保護する塗装工事を行います。
また、屋上やベランダの防水層の定期的な点検と改修も、躯体への水の浸透を防ぐための重要な対策です。